離婚に際して、夫婦の財産をどのように分けるかという財産分与は非常に重要な手続きの一つです。これは、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた共有財産を清算することを主な目的としていま す。共有財産には、現金や預貯金だけでなく、家や土地といった不動産も含まれます。しかし、不動産は現金のように簡単に分けられない性質を持っているため、離婚時の財産分与で最も扱いが難しく、夫婦間で意見が対立し、トラブルに発展しやすい問題の一つとなります。不動産は金額が高額になる傾向があり、さらに住宅ローンが残っている場合や、土地と建物の名義が異なる場合など、複雑な要素が絡み合うことも少なくありません。
この記事では、離婚時の家や土地の財産分与に焦点を当て、どのような財産が対象となるのか、具体的な分け方、住宅ローンがある場合の複雑な取り扱い、財産分与に伴う税金や名義変更の注意点、そして起こりうるトラブルとその解決策まで詳しく解説します。
離婚に伴う財産分与とは?基本を理解しよう
財産分与の定義と性質
財産分与とは、離婚をする夫婦の一方が、他方に対して財産の分与を請求できる制度です。婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産は、名義がどちらか一方であったとしても、夫婦の共有財産であると解釈され、離婚時に公平に分配する必要があります。
財産分与には、主に以下の3つの性質があります。
清算的財産分与: これは財産分与の中心となる考え方です。夫婦が婚姻期間中に協力して作り上げた財産(共有財産)を、離婚に際してそれぞれの貢献度に応じて公平に分配・清算するものです。専業主婦(主夫)であっても、家事労働や育児による貢献が評価され、財産分 与を受けることが可能です。また、離婚の原因を作った側(有責配偶者)でも、清算的財産分与は請求できます。
扶養的財産分与: 離婚によって夫婦の一方が生活に困窮する恐れがある場合に用いられる方法です。例えば、病気で働けない、高齢で仕事が見つかりにくい、専業主婦(夫)で自身の収入が少ないといったケースで、経済的に余裕のある側が生活費として一定期間支払うなど、扶養の目的で財産が分与されることがあります。
慰謝料的財産分与: 一方に不倫やDVなどの有責行為があり、それが離婚の原因となった場合、その精神的な苦痛を償うための慰謝料を財産分与の額に含めてまとめて解決を図る方法です。 慰謝料と財産分与は本来別のものですが、どちらも金銭の支払いによって解決が図られるため、区別せずにまとめて行われることがあります。 慰謝料的財産分与によって、慰謝料の請求が全て含まれたとみなされる場合、重ねて慰謝料のみを別途請求することはできません。
財産分与においては、清算的財産分与をベースに、必要に応じて扶養的側面や慰謝料的側面が考慮されます。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となるのは、原則として婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)に限られます。これらの財産は、名義が夫・妻どちらか一方、あるいは共有名義のいずれであっても対象となります。
具体的に財産分与の対象となる共有財産には、以下のようなものが含まれます。
現金、預貯金: 夫婦共同の銀行口座にある預貯金はもちろん、婚姻中に開設した個人の銀行口座の預貯金も、その原資が共有財産であれば対象となります。 財産分与の協議では、共有財産を明確にするために、夫婦それぞれの銀行口座情報の開示が必要となる場合があります。
有価証券: 株式、債券などがこれにあたります。 結婚後に共有財産を元に購入したものが対象となります。
不動産: 婚姻中に購入した家、マンション、土地などは、基本的に名義に関わらず財産分与の対象となります。
自動車、家財: 婚姻中に購入し、購入資金や維持費を共有財産から支出していた場合に対象となります。 ローンが残っている場合は、査定額から残債を差し引いた金額が対象になるかどうかを判断します。
退職金: 将来支給される予定のものを含め、婚姻期間に相当する部分が財産分与の対象となります。 勤続年数に対する婚姻期間の割合で計算されるのが一般的です。 まだ退職金を受け取っていない場合でも、勤務先の就業規則や定年までの期間などによって、対象になるかどうかが異なります。
企業年金: 企業型確定拠出年金(iDeCoなど)のように、企業が任意で設けている年金制度のうち、積立分などが財産分与の対象として扱われることがあります。
生命保険: 貯蓄性のある積立型の生命保険や養老保険などが対象となります。 解約した場合に支払われる解約返戻金が財産分与の対象額を計算する上での基準となります。 婚姻期間に相当する部分の解約返戻金が対象としてカウントされます。 解約返戻金の金額は、保険会社に問い合わせることで確認できます。 掛け捨て型の生命保険は貯蓄性がないため、財産分与の対象とはなりません。
公的年金のうち、会社員などが加入する厚生年金については、財産分与とは別に年金分割という独自の制度があります。 特に、夫婦の一方に国民年金の第3号被保険者であった期間がある場合、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を夫婦で分割することができます。 全国民が加入する国民年金は、年金分割・財産分与のいずれの対象にもなりません。
財産分与の対象とならない財産(特有財産)
婚姻期間中に築いた財産であっても、夫婦の協力とは関係なく、夫婦どちらかが個人的に所有している財産は特有財産と呼ばれ、財産分与の対象からは外されます。
特有財産となるのは、主に以下のような財産です。
独身時代から所有していた財産: 結婚前から貯めていた預貯金、結婚前に購入した有価証券、自動車、貴金属などがこれにあたります。
婚姻中に夫婦の一方が相続または贈与によって取得した財産: 親族から相続した土地や家、現金などの遺産や、親からの贈与などは、婚姻期間中に取得した場合でも特有財産となります。
夫婦の一方の親族から資金提供を受けて購入した財産: 一方の親族が土地や家などの購入資金を全額負担した場合、その財産は財産分与の対象外となることがあります。
嫁入り道具として持参した家財。
別居後に個人の努力で築いた財産: 原則として、財産分与の対象となるのは、離婚を前提とした別居を開始した時点までに夫婦が協力して築いた財産です。 別居後にそれぞれの収入で形成した財産は、原則として特有財産となります。 住宅ローンについても、別居時点の残債が基準となります。
「特有財産である」という主張があった場合、その財産が特有財産であることを証明する責任は、主張する側にあります(立証責任)。 共有財産か特有財産かの境界線が曖昧な場合は、原則として共有財 産として扱われます。
マイナスの財産(ローン・借金)の取り扱い
財産分与の対象には、プラスの財産だけでなく、**住宅ローンや教育ローン、借金といったマイナスの財産(負債)**も含まれることがあります。 これは、結婚生活を維持したり、共同生活に必要なものを購入したりするために生じた借金は、夫婦共同の債務とみなされるためです。
共同債務とみなされるマイナスの財産としては、以下のようなものが挙げられます。
住宅ローンの残債
教育ローンの残債
日常生活に必要な買い物のためのクレジットカードの未決済分
夫婦で利用した水道光熱費や家賃、マンションの管理費などの未払金
夫婦共有の車など、共同で使用する目的で購入したものの購入ローンの残債
これらのマイナスの財産がある場合、原則としてプラスの財産からマイナス分を差し引いた上で、残りのプラスの財産を財産分与の対象とすることに なります。例えば、共有財産の総額が3,000万円で、共同債務が1,000万円ある場合、差し引き2,000万円が財産分与の対象となり、これを夫婦で分け合うことになります。
ただし、夫婦のどちらかがギャンブルや浪費など、個人的な目的で作った借金は、婚姻生活とは関係のない個人の債務とみなされ、財産分与の対象にはなりません。 このような借金は、借りた本人が単独で返済する責任を負います。
財産分与の割合と請求期限
夫婦の共有財産の形成における夫婦それぞれの貢献度は、特別な事情がない限り、**平等である(2分の1ずつ)**と考えられています。 そのため、**財産分与の割合は基本的に2分の1(折半)**となります。 これは、夫が主に収入を得ていた場合でも、妻が家事や育児を担うことで夫の仕事を支え、財産形成に貢献したと評価されるためです。 専業主婦(夫)の場合でも、財産分与の割合は基本的に2分の1です。
しかし、夫婦のどちらかが特別な資格(医師など)や能力、あるいは会社経営などの特別な努力によって、他の夫婦に比べて著しく多額の共有財産を築いたと認められるような特段の事情がある場合には、貢献度に応じて財産分与の割合が変わる可能性があります。
財産分与の請求は、離婚が成立した日から2年以内に行う必要があります。 この2年という期間は、家庭裁判所に財産分与に関する調停または審判を申し立てることができる期限です。 離婚から2年を経過すると、原則として家庭裁判所での手続きを通じて財産分与を請求する権利は失われてしまいます。 ただし、離婚後2年を経過した場合でも、夫婦間の合意があれば任意で財産分与を行うことは可能です。 しかし、財産分与の請求を受ける側にとってはメリットがないため、相手が合意に応じる可能性は低いのが現実です。 財産分与に関する話し合いは、時間が経過するほど財産の状況が変化したり、関係性が複雑になったりして、解決が難しくなる 傾向があるため、離婚の際には早めに話し合うことが非常に重要です。
土地・家の財産分与|具体的な方法と確認ポイント
婚姻中に購入した土地やその上の建物は、基本的に離婚する際の財産分与の対象となります。しかし、これらは現金のように簡単に分割できないため、財産分与の方法について夫婦間で合意に至らず、離婚時に揉める大きな原因となりやすいのです。
不動産の財産分与で確認すべき重要なポイント
不動産を財産分与の対象とする場合、その手続きを進める前にいくつか確認しておくべき重要なポイントがあります。
不動産の登記名義: その不動産の所有者が誰になっているか(夫単独名義、妻単独名義、夫婦の共有名義など)を、登記事項証明書の権利部(甲区)で確認します。 登記事項証明書は、全国どこの法務局でも取得可能です。 登記名義が誰であるかは、財産分与の対象となるかどうか自体には影響しませんが、財産分与の方法やその後の手続きに影響するため重要な情報です。
住宅ローンの債務者や残債: 住宅ローンが残っている場合は、ローンの契約者が誰か(夫、妻、あるいは連帯債務やペアローンなど)や、現在の借入残高がいくらであるかを確認します。 債務者や抵当権に関する情報は、登記事項証明書の権利部(乙区)で確認できます。 正確な残債額については、住宅ローンの返済予定表や、借入先の金融機関に問い合わせて残高証明書を取得することで確認できます。
財産分与の対象となる期間: 財産分与の対象となる財産は、原則として別居時点までに夫婦が協力して築いた財産です。 不動産の評価額や住宅ローンの残債も、この別居時点を基準として判断します。 別居することなく離婚した場合は、離婚成立日が基準日となります。
不動産の価値(評価額): 財産分与において、不動産の価値は原則として時価が用いられます。 時価とは、実際に市場で売買されると想定される価格のことです。 不動産会社に査定を依頼するなどして、現在の市場価格を把握する必要があります。
具体的な分配方法: 不動産をどのように分け合うかという方法です。 これが財産分与の話し合いの中心となり、具体的な方法については後述します。
土地・家の具体的な財産分与の方法
土地や家を財産分与する際には 、主に以下の2つの方法が考えられます。
土地・家を売却して、得られた現金を分け合う方法
どちらか一方が土地・家を譲り受け、相手に代償金(対価)を支払う方法
これらの方法について、詳しく見ていきましょう。
方法1:土地・家を売却して現金を分け合う
この方法は、夫婦のどちらも現在の家に住み続けることを望まない場合に選択されることが一般的です。 土地や家を売却し、その売却によって得られた現金を夫婦で分け合うという方法です。
この方法の最大のメリットは、財産を現金という形で明確に分けられるため、トラブルが発生しにくい点にあります。 公平感を保ちやすく、夫婦それぞれが新たな生活のための資金を得ることができます。
売却を進めるためには、まず不動産会社に自宅の査定を依頼し、現在の市場価値(査定額)を把握する必要があります。 査定額は不動産会社によって異なる場合があるため、複数の会社に査定を依頼し、その根拠を確認することが推奨されます。
ただし、不動産はすぐに売れるとは限らず、買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性があります。 売却活動が長期化すると、財産分与の手続き自体も遅れてしまうおそれがあります。 場合によっては売却に1年以上かかるケースも あり得ます。
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、売却代金とローンの残債の関係によって対応が異なります。
売却代金で住宅ローンを完済できる場合(アンダーローン): ローン残額が不動産の評価額(売却金額)を下回っている状態をアンダーローンといいます。 アンダーローンの場合、売却代金から住宅ローンを全額返済し、ローン完済後に残った現金を夫婦で分け合えば問題ありません。 これは、住宅ローンを完済できる最もシンプルで分かりやすい方法です。 売却後は住宅ローンの支払い義 務もなくなるため、夫婦双方がすっきりした気持ちで新たなスタートを切りやすいでしょう。
売却代金で住宅ローンを完済できない場合(オーバーローン): ローン残額が不動産の評価額(売却金額)を上回っている状態をオーバーローンといいます。 オーバーローンの場合、不動産を売却しても住宅ローンが残ってしまいます。 通常、住宅ローンが残っている不動産には、金融機関によって抵当権(ローン返済が滞った場合に、金融機関が不動産を競売にかけて優先的に弁済を受ける権利)が設定されています。 抵当権が設定されたままでは、一般的に買い手が見つかりません。 抵当権を抹消するためには、原則としてローンを全額完済する必要があります。 したがって、オーバーローンの物件を売却するには、売却代金だけでは足りない不足分を、夫婦の預貯金などの自己資金から支払ってローンを完済する必要があります。 夫婦の手元に十分な預貯金がない場合、たとえ売りたくてもローンを完済できないため、売却自体が難しくなる状況に陥る可能性があります。 この場合、離婚後も住宅ローンの返済を続けなければならなくなることもあります。
任意売却: オーバーローンで、かつ預貯金も十分でないためにローンを完済できない場合でも、自宅を手放す方法として任意売却が考えられます。 これは、債権者である金融機関の同意を得て、住宅ローンの残債があっても不動産を売却する方法です。 金融機関の承諾が得られれば、ローンを完済できなくとも抵当権を解除して売却を進めることが可能となります。 しかし、任意売却は住宅ローンの返済が困難になった場合の最終手段として行われるものであり、金融事故として信用情報に履歴が残ってしまう可能性があります。 その後の借り入れなどに影響が出る可能性があるため、任意売却を選択する際には非常に慎重な判断が必要です。
方法2:どちらか一方が譲り受けて代償金を渡す
この方法は、夫婦の一方が離婚後も引き続き現在の家に住み続けることを希望する場合に選択されます。 家に住み続ける側が、もう一方に対して、不動産の価値の半分に相当する金額を代償金(対価)として支払うという方法です。 財産分与の基本的な割合が2分の1であることから、「評価額の半額」を代償金とするのが通常です。
例えば、子供の転校を避けたい、仕事場から近い、親の介護が必要など、様々な理由で現在の家に住み続けることを希望する場合に有効な方法です。 この方法を選択した場合、まず不動産鑑定士に依頼したり、固定資産税の納税通知書を確認したりすることで、自宅の正確な評価額を算定します。 その後、 家に住み続ける側が、算出された評価額の半額を、家を出て行く側に現金で支払います。 自宅の評価額が3,000万円であれば、住み続ける側が1,500万円を支払うことになります。
この方法の大きな注意点は、家に住み続ける側が、代償金として多額の現金を用意しなければならない場合がある点です。 不動産の評価額によっては、代償金の負担が非常に大きくなる可能性があります。 また、住宅ローンが残っている場合、そのローンの取り扱いについてさらに検討が必要となります。
土地に建物が建っている場合の財産分与
土地の上に建物が建っている不動産を財産分与する場合、土地と建物の所有名義が夫婦どちらか一方、あるいは共有名義となっているのが一般的ですが、土地と建物の名義が違う場合もあり、財産分与を複雑にする要因となります。
土地が夫婦の共有名義、建物の名義が妻(または夫)の両親: このケースでは、財産分与の対象となるのは「夫婦の財産」である土地のみであり、建物は「妻(または夫)の両親の財産」であるため対象になりません。 土地の財産分与の方法としては、土地を売却して現金を分けるか、夫婦のどちらかが土地を譲り受けて代償金を渡す方法が考えられます。 しかし、建物が建ったままの土地だけを買い取りたいという買い手はほとんど現れないため、土地のみを売却することは非常に困難です。 このため、実際には妻(または夫)の両親に同意を得て、土地と建物を同時に売却するといった対応が必要になるでしょう。
土地の名義が夫、建物の名義が妻: 土地も建物も婚姻期間中に夫婦の共有財産を元に取得されたものであれば、名義が異なっていても基本的にどちらも財産分与の対象となります。 したがって、土地と建物両方を合わせて売却し、売却代金を分け合う方法も、どちらか一方が代償金を支払って土地と建物の両方を受け取る方法も選択可能です。
土地または建物のいずれかが特有財産の場合: 土地とその上の建物のうち、いずれか一方(または両方)が、婚姻前に取得したものや相続・贈与で得たものといった特有財産である場合があります。 この場合、特有財産は財産分与の対象にはなりません。 財産分与の対象となる共有財産と、対象とならない特有財産が混在することになります。 こうしたケースでは、特有財産を所有している側が、財産分与の対象となる共有財産(土地または建物)を受け取る代わりに、相手に代償金を支払うという方法が妥当と考えられます。 これにより、土地と建物の所有名義を夫婦どちらか一方に統一することができ、将来売却するなどの手続きがスムーズになります。 もっとも、夫婦間の話し合いで合意が得られれば、土地と建物両方をまとめて売却し、得られた売却代金すべてを夫婦で分け合うことも可能です。
妻の親から相続した土地の上に、夫が経営する会社名義の建物が建っている場合: 妻の親から相続した土地は、妻の特有財産であるため財産分与の対象にはなりません。 その土地の上に建っている建物が夫の会社名義である場合、建物は会社の財産となるため、原則として財産分与の対象には含まれません。 ただし、夫が経営する会社の業績向上に妻が献身的に貢献していたなど、特段の事情が認められる場合には、会社の財産の一部が夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象になる可能性も考えられます。
ローンが残っている場合の土地・家の財産分与
住宅ローンが残っている不動産の財産分与は、不動産自体を分ける方法だけでなく、ローン債務をどう整理するかという問題が加わるため、さらに複雑になります。 特に、夫婦のどちらか一方が離婚後も引き続き家に住み続けることを選択した場合に、ローンの取り扱いが大きな問題となりやすいです。
どちらか一方が家に住み続ける場合の住宅ローン
夫婦の一方が家に住み続け、もう一方が家を出て行くという状況では、住宅ローンの「債務者(ローンを借りた人)」と「実際に家に住む人」が異なるというケースが発生することがあります。
住宅ローンの債務者となっている側が、そのまま家に住み続けるパターン: ローンを借りた本人が家に住み続け、そのままローンを返済していくという、比較的シンプルで問題が少ないケースです。 しかし、この場合でも、家を出て行く側の配偶者がその住宅ローンの連帯保証人になっている場合は注意が必要です。
住宅ローンの債務者ではない側が、家に住み続けるパターン: 家を出て行く側の配偶者が住宅ローンの債務者であり、家に残る側の配偶者が住み続けるというケースです。 これは、例えば子供の養育のために妻(または夫)が家に残り、収入のある夫(または妻)が家を出てローンの返済を続けるといった場合に選択されることがあります。 家に住み続ける側にとっては、住む場所を確保できるというメリットがありますが、大きなリスクも伴います。 それは、住宅ローンの債務者(家を出て行った側)がローンの返済を滞らせた場合、家に住んでいる側が住居を失う可能性があるためです。 金融機関は抵当権を実行し、家を競売にかけて債権を回収しようとするからです。
「家に住み続ける人に住宅ローンの債務者を変更すれば良いのではないか」と考えるのは自然なことですが、これは非常に難しいのが現実です。 住宅ローンを組む際には、金融機関による厳格な審査があります。 この審査は、申込者(債務者)の収入や返済能力などを評 価して行われます。 債務者を変更するということは、金融機関にとってはローンの契約者を変えることであり、新たな債務者の返済能力などを改めて審査する必要があります。 家に住み続ける側が、単独でローンの審査基準を満たさない限り、金融機関は債務者の変更を容易には認めません。 同じ金融機関内で債務者変更を求める場合でも、他の金融機関への借り換えを試みる場合でも、新たな審査は必須となります。 金融機関からすれば、ローンの契約者が変わることで、貸付金が回収できなくなるリスクが高まる可能性があるため、簡単に応じることはできないのです。 多くの場合、新たな債務者に対して、連帯保証人を立てることを求められますが、これも新たな保証人の返済能力次第であり、必ず認められるわけではありません。
夫婦共同で住宅ローンを借りている場合(ペアローン・連帯債務): 夫婦それぞれが独立した住宅ローンを組んで一つの不動産を購入するペアローンや、夫婦が連帯して一つの住宅ローンを返済する連帯債務の場合も、どちらか一方が家に住み続ける際に問題が生じます。 ペアローンの場合、一方が家を出て行く際、出て行く側のローンを家に残る側に引き継いでもらうには、新たな審査が必要です。 連帯債務の場合も、契約を単独の債務に変更するには、金融機関との契約内容を変更する必要があり、これもハードルが高いでしょう。 金融機関は、夫婦二人の収入や返済能力を合わせて評価した上でローンを設定しているため、返済者が一人になることでリスクが大きくなるため、簡単には契約内容の変更を認めないのです。 住宅ローンの借り換えができない場合、家に住み続ける側と出て行く側の双方が、引き続き契約通りにローンを返済していく義務を負います。 ペアローンでは、夫婦がお互いのローンの連帯保証人となっているのが一般的であり、一方が返済を滞納すると、もう一方が連帯保証人として返済を肩代わりする義務を負うため、トラブルに発展しやすいケースです。
連帯保証人に関する重大な注意点
住宅ローンの連帯保証人になっている場合は、特に注意が必要です。 連帯保証人とは、主たる債務者(ローンを借りた本人)がローンの返済ができなくなった場合に、主たる債務者と同等の返済義務を負う人のことです。 つまり、連帯保証人は、主たる債務者が返済しない場合に、金融機関から直接返済を請求されることになります。 家に住み続けるかどうかに関わらず、夫婦の一方がもう一方の住宅ローンの連帯保証人になっている場合、離婚後に主たる債務者である元配偶者の返済が滞ると、連帯保証人である自身に金融機関から返済を請求されてしまいます。
住宅ローンの契約内容を確認し、自身が連帯保証人になっている場合は、離婚の財産分与の話し合いの中で、金融機関との交渉により連帯保証を外してもらうように求めることが非常に重要です。 しかし、前述の通り、金融機関は債権保全のために連帯保証人を求めている場合が多いため、簡単には連帯保証を外すことに同意しないのが実情です。
万 が一、連帯保証人として住宅ローンを支払うことになった場合でも、支払った金額については、本来返済義務を負うべき元配偶者に対して請求する権利(求償権)があります。
離婚協議書を公正証書化することの重要性
離婚後、夫婦の一方が家に住み続け、家を出て行く側の配偶者が住宅ローンを返済するという取り決めをした場合、家に住む側は、出て行った配偶者がきちんとローンを返済してくれるかどうか不安を感じることになります。 もし出て行った配偶者の返済が滞れば、家が競売にかけられてしまい、家に住み続けることができなくなるリスクがあるためです。
このようなリスクを軽減し、夫婦間で取り決めた財産分与の内容(特に金銭の支払いに関するもの)を確実に履行させるために、離婚時に作成する離婚協議書 を公正証書として作成しておくことが非常に有効です。 公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公的な書類であり、高い証明力と信頼性があります。 特に、離婚協議書を公正証書として作成する際に、「債務者が支払いを怠った場合には、直ちに強制執行に服する」という趣旨の文言(強制執行認諾条項)を含めておくことで、万が一、住宅ローンの負担や代償金の支払いなどが滞った場合に、裁判を経ることなく、相手の財産(預貯金や給与など)を差し押さえるなどの強制執行が可能となります。 家に住み続ける側にとっては、これにより住居を失うリスクを大幅に軽減することができます。
土地・家の評価方法と財産分与に伴う税金・名義変更
土地・家の評価方法
財産分与の対象となる土地や家の評価額をどのように算定するかは、夫婦間で合意形成が必要となる重要なポイントです。 どの評価方法を用いるかによって、評価額は大きく変わる可能性があるためです。 土地の評価方法には主に以下の6つが挙げられます。
固定資産税評価額: 市町村が固定資産税を計算するために用いる評価額で、数年に一度見直されます。 時価よりも低いのが一般的です。
実勢価格: 実際に市場で不動産が売買される価格のことです。 不動産会社が市場動向などを基に算出する査定価格も、この実勢価格に近いものです。
鑑定評価額: 不動産鑑定士という専門家が、不動産の状況や市場性などを詳しく調査・分析して算出する評価額です。 客観性が高いとされます。
査定評価額: 不動産会社が、その不動産を売却すると仮定した場合に、いくらで売却できるかという見込み価格を算出するものです。 不動産会社によって査定額が異なる場合があるため、複数の会社に依頼することが推奨されます。
公示地価: 国土交通省が毎年発表する、全国の標準的な土地の1平方メートルあたりの正常な価格です。 一般の土地取引価格の目安となります。
路線価: 国税庁が毎年発表する、主要な道路に面した土地の1平方メートルあたりの価格です。 相続税や贈与税の算定に用いられます。
財産分与の目的で土地や家を評価する際に、どの評価方法を使用しなければならないという法律上の決まりはありません。 したがって、夫婦双方が合意しているのであれば、どの評価方法を選択しても自由です。 ただし、不動産を譲り受けて代償金を支払う側としては、代償金の額を抑えるために低い評価額を望み、代償金を受け取る側としては、より多くの金額を得るために高い評価額を望む傾向があるため、どの評価方法を用いるかで意見が対立しやすいポイントです。 不動産の売却を検討している場合は、実勢価格や不動産会社の査定評価額を参考にすることが多いでしょう。 一方が住み続ける場合は、不動産鑑定士による鑑定評価も選択肢となります。
財産分与の対象となる土地や家の評価額を算定する基準時期は、原則として**夫婦が協力して財産を築いてきた同居期間が終了した日(=別居日)**です。 これは、財産分与が夫婦の協力によって築いた財産を清算する制度であるため、協力関係が終了した時点の財産を評価するという考え方に基づいています。 もし別居することなく離婚が成立した場合には、離婚成立日が評価の基準日となります。
ご自身のケースではどの評価方法が適切か、どのように合意形成を進めるべきか判断に悩む場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。 弁護士は、専門的な知識から適切なアドバイスを提供し、交渉をサポートしてくれます。
土地・家の財産分与でかかる税金
離婚に伴う土地や家の財産分与を行う際に、税金がかかる可能性があります。 主に問題となるのは贈与税と譲渡所得税です。 税金のかかり方は、不動産を渡す側と受け取る側で異なる可能性があります。
財産分与として 不動産を受け取る側は、原則として贈与税は課税されません。 これは、財産分与が離婚に伴う夫婦の財産の清算であり、贈与とは性質が異なると考えられているためです。 しかし、財産分与された不動産の価額が、清算的財産分与として本来分与されるべき金額と比較して不相当に高額である場合や、相続税や贈与税の支払いを逃れるために財産分与を装って名義変更が行われたと認められるような特別なケースでは、その不相当に多額な部分について贈与税が課税される可能性があります。
財産分与と して不動産を渡す側は、その不動産を**「時価で譲渡(売却)したもの」とみなされ、不動産の取得時からの価値の上昇分(譲渡益、いわゆる含み益)に対して譲渡所得税**(所得税・住民税)が課税される可能性があります。 これは、代償金の授受の有無にかかわらず課税され得ます。 ただし、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」など、一定の税制上の特例が適用できる場合もあります。
財産分与に伴う税金に関する判断や計算は複雑であり、個別の状況によって適用される税法が異なります。税金に関する疑問や不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
土地・家の名義変更
財産分与によって土地や家を取得することが決まった場合、その不動産の所有名義人がまだ元配偶者の名義や夫婦共有名義になっている場合は、必ず速やかにご自身の単独名義に変更する手続き(名義変更、正式には所有権移転登記)を行う必要があります。
なぜなら、不動産の所有者として法的に保護されるのは、登記簿に名前が登録されている所有名義人だからです。 財産分与の話し合いで不動産を取得することが決まり、夫婦間では合意が成立していたとしても、法務局の登記簿上の名義が変更されていない限り、その合意内容を第三者に対して主張することはできません。
名義変更をしないまま放置しておくと、様々な不利益やリスクが生じる可能性があります。 例えば、所有名義人である元配偶者が勝手にその不動産を第三者に売却してしまったり、元配偶者 が借金をした場合に、その不動産が元配偶者の債務に対する差し押さえの対象になってしまったりするおそれがあります。 こうしたリスクからご自身の権利を守るためにも、財産分与後速やかに名義変更の手続きを行うことが非常に重要です。
財産分与による不動産の名義変更手続き(所有権移転登記)は、必要書類の準備や登記申請の手続きが複雑なため、通常は司法書士に依頼して行います。
離婚時の財産分与でよくあるトラブルと解決策
離婚時の財産分与は、夫婦間の長年の歴史や感情が絡み合うため、様々なトラブルが発生しやすい場面です。 特に家や土地といった金額の大きい不動産が絡むと、対立が深まることも少なくありません。
財産隠しや使い込み
財産分与の話し合いが始まる前に、または話し合い中に、相手が共有財産を隠したり、勝手に使い込んだりする財産隠し・使い込みのトラブルは後を絶ちません。 預貯金や有価証券などを、自身の個人名義の口座やネット口座、あるいは貸金庫などに移し替えるといった方法が考えられます。
財産隠しが疑われる場合は、相手に対して銀行口座の取引履歴などの開示を求め、不自然な取引がないか確認する対応が必要です。 もし相手が口座の存在自体を認めない場合や、どこの金融機関に口座があるか分からない場合は、弁護士会を通じて金融機関に問い合わせる弁護士照会や、裁判所を通じて金融機関に口座の有無や取引履歴の提出を命じる調査嘱託といった法的な手続きを行うことで、財産の調査を進めることができます。 ただし、調査嘱託は、照会する金融機関や支店名を特定する必要がある場合があるなど、一定のハードルがあることも事実です。
財産分与の請求の拒否
財産分与は、民法で定められた離婚に伴う夫婦の権利義務です。 したがって、原則として離婚が成立した日から2年以内であれば、相手が一方的に財産分与の話し合いや請求を拒否することはできません。 もし相手が話し合いに応じない、あるいは話し合っても合意ができない場合には、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てることができます。 調停手続きの中で、裁判所の調停委員を介して話し合いを進め、合意を目指します。 調停でも合意に至らなかった場合は、審判に移行し、裁判官が一切の事情を考慮して財産分与の方法や金額を決定することになります。
離婚から2年が経過してしまうと、原則として家庭裁判所での財産分与に関する手続き(調停や審判)を利用して請求することができなくなります。 ただし、離婚後2年を経過した場合でも、相手による財産隠しが後から発覚した場合や、夫婦双方が合意している場合は例外的に財産分与が可能なケースもあります。 しかし、合意がない限り請求は難しくなるため、期限内の対応が非常に重要です。
特有財産であると不当に主張される
夫婦が協力して築いた共有財産と認識していた不動産や預貯金などについて、相手から「これは自分の独身時代の貯金で買ったものだ」「親からの相続財産であり、特有財産だから財産分与の対象ではない」などと、特有財産であると主張されるケースがあります。 共有財産か特有財産かの判断が難しい財産については、原則として夫婦の協力によって築かれた共有財産として扱われま す。 もし裁判で特有財産であるかが争点となった場合、**その財産が特有財産であると主張する側が、それが特有財産であることを立証する責任(立証責任)**を負います。 主張された側が「これは特有財産ではない」と積極的に証明する必要はありません。
同意なく家を勝手に売却される
財産分与の話し合いが進行中であるにも関わらず、相手が夫婦の共有財産である家や土地を、もう一方の同意を得ないまま、あるいは黙って勝手に第三者に売却してしまうといった悪質なトラブルも起こり得ます。 不動産の登記名義が相手単独になっている場合に起こりやすいトラブルです。
このような事態を未然に防ぐためには、家庭裁判所に不動産に対する仮差押えの手続きを申し立てることが有効な手段となります。 仮差押えとは、判決が確定するまでの間、相手が財産を勝手に処分したり隠したりできないように、一時的に財産を差し押さえる民事保全手続きの一つです。 不動産に対して仮差押えの登記が行われると、登記簿に「この物件は仮差押えされている物件である」ということが記載され、第三者がその不動産を購入しようとした際に、係争中の物件であることが分かります。 これにより、相手が勝手に不動産を売却することを事実上食い止める効果が期待できます。 仮差押えの申し立てには、一定の担保金(保証金)を法務局に供託する必要があるのが一般的ですが、担保金が用意できない方向けの制度もあるため、このような状況に直面した場合は専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。
離婚時の財産分与の話合いは早めに
離婚時の財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた大切な財産を清算する手続きであり、特に家や土地といった不動産が関わる場合には、その評価方法や具体的な分け方、ローンの取り 扱い、税金、そして名義変更など、検討すべき事項が多岐にわたり、複雑な問題が生じやすい傾向があります。 感情的な対立から話し合いが難航したり、財産隠しといったトラブルが発生したりするリスクも伴います。
財産分与の請求には、離婚成立から2年以内という期限があります。 また、時間が経過するにつれて財産の状況が変化したり、関係性がさらにこじれたりして、問題の解決がより困難になることも少なくありません。 そのため、離婚を考えている、あるいは既に離婚の話が進んでいる場合は、財産分与についてもできる限り早めに夫婦で話し合いを開始することが重要です。
夫婦間での話し合いだけでは合意に至らない場合や、どのように話し合いを進めれば良いか分からない場合には、弁護士などの専門家に相談することで、スムーズな解決に繋がる可能性があります。
離婚時の家・土地の財産分与、弁護士に相談するメリット
土地や家といった不動産が絡む財産分与は、その性質上、非常に専門的な知識や経験が必要となります。 不動産の適正な評価、住宅ローンの複雑な取り扱い、税金に関する考慮、そして適切な名義変更手続きなど、当事者だけで正確に理解し、適切に進めることは容易ではありません。 また、感情的な対立から冷静な話し合いができなかったり、相手が非協力的な態度をとったり、財産隠しや不当な主張といったトラブルが発生したりするリスクも常に存在します。
このような状況に直面した場合、専門家である弁護士に相談・依頼することで、離婚時の家や土地の財産分与を円滑かつ、ご自身の状況にとってより有利に進められる可能性が高まります。 弁護士に相談・依頼するメリットは多岐にわたります。
複雑な不動産評価やローンの専門的なアドバイス: 弁護士は、不動産の評価方法や、住宅ローンの残債がある場合の複雑な 取り扱い(アンダーローン、オーバーローン、連帯保証、ペアローンなど)について、専門的な知識に基づいた的確なアドバイスを提供してくれます。 ご自身の状況に合わせた最善の解決策を見つけるサポートをします。
公平な財産分与の実現に向けたサポート: 弁護士は、法的な観点から公平な財産分与となるようサポートします。 不動産の適正な評価、ローン債務の適切な分担、代償金の算出などにおいて、ご依頼者様の権利を守り、納得のいく解決を目指します。
相手との交渉代行: 感情的な対立から直接話し合うことが難しい場合でも、弁護士がご依頼者様に代わって相手との交渉を行います。 法的な根拠に基づいて冷静に交渉を進めることで、感情論になりがちな話し合いを建設的な方向へ導き、スムーズな合意形成を目指すことができます。 交渉がストレスとなる精神的な負担も軽減されます。
財産調査やトラブルへの対応: 相手による財産隠しが疑われる場合、弁護士は法的な手続き(弁護士照会、調査嘱託など)を用いて財産調査をサポートできます。 また、財産分与の拒否や特有財産の不当な主張、同意のない不動産の売却といったトラブルに対しても、調停や審判、仮差押えといった適切な法的手続きを用いて、ご依頼者様の権利を強く守ります。
煩雑な手続きの代行: 財産分与を進める上で必要な財産リストの作成、評価額の算定に必要な書類の準備、そして財産分与後の不動産の名義変更手続きなど、煩雑な手続きについてサポートや代行を依頼できます。
最良の結果を得るための尽力: 弁護士は、ご依頼者様一人ひとりの状況や希望を丁寧に伺い、最良の結果が得られるよう全力を尽くしてくれます。
「離婚を考えているものの、家や土地の財産分与でどうしたら良いか分からない」「住宅ローンが残っている不動産をどう分けるかで揉めている」「相手が財産を開示しない、勝手に家を売ろうとしている」など、家や土地の財産分与に関して少しでも不安や疑問、お悩みをお持ちの方は、まずは専門家である弁護士に相談してみることをお勧めします。 弁護士に相談することで、ご自身の状況を客観的に整理し、取るべき対応や将来の見通しについて具体的なアドバイスを受けることができます。
まとめ
離婚時の財産分与において、家や土地といった不動産は、その評 価や分け方、そして住宅ローンの有無などが絡み合い、非常に複雑でトラブルになりやすい要素を含んでいます。 婚姻中に夫婦が協力して築いた不動産は、名義に関わらず財産分与の対象となりますが、特有財産は対象外となります。 不動産の財産分与には、売却して現金を分ける方法や、どちらか一方が譲り受けて代償金を支払う方法がありますが、特に住宅ローンが残っている場合には、アンダーローンかオーバーローンか、どちらが家に住み続けるかなどによって対応が異なり、連帯保証人の問題なども生じるため、その取り扱いはさらに複雑になります。 また、不動産の評価方法、財産分与に伴う税金、そして財産分与後の名義変更手続きなど、多くの注意すべきポイントが存在します。
財産隠し、財産分与の拒否、特有財産の不当な主張、同意なき売却といったトラブルが発生するリスクもあり、夫婦間の感情的な対立から話し合いがスムーズに進まないことも少なくありません。
このような状況において、家や土地の財産分与を公平かつ円満に解決するためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠で す。 弁護士は、財産分与に関する豊富な専門知識と経験を活かし、適切な財産調査、不動産の評価、ローンの整理、税金や名義変更に関する注意点のアドバイス、そして相手との交渉や、必要に応じた調停・審判・仮差押えといった法的手続きを代行することで、ご依頼者様の権利を守り、最良の結果が得られるよう力強くサポートします。
離婚に伴う財産分与は、その後の生活の基盤を左右する非常に重要な問題です。 家や土地の財産分与について不安や疑問を抱えている方は、一人で悩まず、まずは専門家である弁護士に相談し、ご自身の状況に合わせた適切なアドバイスを受けることから始めましょう。
