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離婚時のマンション財産分与|「住み続けたい」を実現するための複雑な問題と弁護士の役割

2025年4月29日

離婚時のマンション財産分与|「住み続けたい」を実現するための複雑な問題と弁護士の役割

離婚を検討される際、夫婦が共同生活を送る中で築き上げてきた財産をどのように分けるかは、非常に重要な問題となります。特に、持ち家であるマンションや一戸建ては高額な資産であるため、その扱いは離婚時の財産分与において大きな問題となりやすい点です。多くの夫婦は、マンションを「売却して現金化し分ける」か、「どちらかが住み続ける」かの選択肢で悩まれます。

もしあなたが「離婚後もこのマンションに住み続けたい」と強く願っているなら、その希望を実現するためには様々な複雑な手続きやリスクが伴うことを理解しておく必要があります。特に、住宅ローンが残っている場合や、マンションの名義がどちらか一方にしかない場合など、解決しなければならない問題は多岐にわたります

このような状況で、あなたの希望を可能な限り叶え、将来的なリスクを回避するためには、法律の専門家である弁護士に相談することが非常に有効です。弁護士は、あなたの個別の状況を正確に把握し、法的な観点から最適な解決策を提案し、複雑な手続きをサポートしてくれます。

本稿では、離婚時のマンション財産分与における基本的な知識から、「住み続けたい」という希望を叶えるための具体的な方法、それに伴う様々なリスクや注意点、そして専門家である弁護士に相談することの重要性について詳しく解説します。

離婚時の財産分与とは?基本的なルールを知る

まず、離婚時の財産分与とはどのような制度なのか、その基本的なルールを確認しましょう。

財産分与の基本原則:夫婦の共有財産を公平に分割

財産分与とは、結婚している期間に夫婦が協力して築き上げた共有財産を、離婚時に二人で分割することを指します。これは、夫婦が婚姻期間中に得た財産に対して、夫と妻それぞれが請求権を持つ制度です。

財産分与の基本的な考え方は、夫婦が協力して築いた財産を公平に分割することにあります。原則として、**財産分与の割合は「2分の1」**とされています。これは、収入の多寡や、どちらかが専業主婦(夫)であったかに関係なく適用される原則です。夫婦の一方が家事労働や精神的な支援を行うことで、もう一方が収入を得られたという考え方があるためです。

ただし、この2分の1という割合は法律で厳密に規定されているわけではなく、夫婦が話し合いによって合意すれば、どのような割合で分けるか自由に決めることができます。しかし、極端に不均等な分配を行うと、贈与税が課税される可能性があるため注意が必要です。また、例外的に、財産分与が2分の1の割合にならないこともあります。これは、2分の1での分与が公平性を確保できないと判断される場合で、実際の割合は個別の裁判で決定されることがあります。

財産分与の対象となる財産、対象外となる財産

財産分与の対象となるのは、**原則として婚姻期間中に築かれた夫婦の「共有財産」**です。共有財産とは、夫婦の協力によって得られた収入を元に形成された財産の全てを指します。

具体的には、以下のようなものが財産分与の対象に含まれます。

  • 現金・預金

  • 有価証券(株式、投資信託など)

  • 年金・生命保険の積立金

  • 退職金

  • 不動産(家、土地、マンションなど)

  • 自動車

  • 家具や家電、美術品などの動産

  • 夫婦が共同で経営する会社の株式や事業資産

これらの財産は、たとえ夫婦のどちらか一方の名義になっていても、結婚期間中に築かれたものであれば原則として共有財産とみなされます

一方、財産分与の対象外となるのは、夫婦の協力とは無関係に得られた「特有財産」です。特有財産には以下のようなものがあります。

  • 婚姻前から所有していた財産

  • 婚姻中に自己の名義で相続または贈与によって得た財産

  • 親族からの生前贈与

例えば、「財産目当ての結婚」という言葉があるように、結婚相手が独身時代に得た財産については、離婚時に請求権はありません。また、マンション購入の際にどちらかの親から頭金を出してもらった場合、その頭金部分は贈与として扱われ、頭金を出してもらった側の**「特有財産」として財産分与の対象外**となります。特有財産が含まれる場合の財産分与の計算は複雑になるため、専門家への相談が推奨されます。特有財産であることを主張するためには、遺産分割協議書、贈与契約書、購入時の書類など、特有財産であることを証明できる書類が必要であり、証明できない場合は共有財産とみなされる可能性があるため注意が必要です。

財産分与の種類

離婚時の財産分与には、大きく分けて三つの種類があると考えられています。ただし、実際にはこれらが厳密に区別されず、複合的に考慮されることが多いようです。

  • 清算的財産分与: 婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、それぞれの寄与度に応じて分配することです。これが財産分与の根幹となる考え方です。

  • 扶養的財産分与: 離婚後すぐに経済的な自立が難しい配偶者が、自立できるまでの生活費として、もう一方の配偶者が財産を分配することです。

  • 慰謝料的財産分与: 不貞行為(不倫)やドメスティック・バイオレンス(DV)など、離婚の原因を作った有責配偶者が、もう一方の配偶者に対して慰謝料として財産を分配することです。有責配偶者であっても、清算的財産分与を求めることは可能です。

マンションを財産分与する方法

マンションや一戸建てといった不動産は「物」であり、預貯金のように単純に分割することができません。そのため、離婚時の財産分与においてマンションをどう扱うかには、主に以下の二つの方法があります。

  1. マンションを売却して現金化し、得た資金を分け合う

  2. 夫婦の一方がマンションを取得し、もう一方に対してマンションの価値に応じた現金を支払う(代償金支払い)

さらに、住宅ローンが残っている場合や、子どものことなど、様々な事情によってこれらの基本的な方法から派生したいくつかの選択肢や考慮すべき点が生じます。

方法①:マンションを売却して現金化し分け合う

マンションを売却して現金にした上で、そのお金を夫婦で分け合う方法は、不動産の財産分与において最も分かりやすい方法の一つです。現物ではなく現金での分割となるため、割合の計算もしやすく、比較的トラブルが少ないと考えられています。また、離婚後の新生活に向けて、夫婦双方にとってまとまった資金を手にすることができるというメリットもあります。

売却して現金化する際の流れは以下のようになります。

  1. マンションの市場価値と住宅ローンの残債を確認する。不動産会社に査定を依頼したり、住宅ローンの返済予定表などで残債を確認します。

  2. 夫婦で話し合い、売却の方針と売却代金の分け方を決める。話し合いが難しい場合は弁護士に依頼することも可能です。

  3. マンションを売却する。買主との交渉で売却価格が決定します。売却には数カ月かかることもあります。

  4. 売却代金から住宅ローンの残債や諸費用(手数料、税金など)を差し引き、残金を分割する。財産分与の対象となるのは、マンションの価値から住宅ローンの残債を差し引いた金額です。売却にかかる手数料や税金(譲渡所得税など)も考慮する必要があります。

  5. 財産分与の内容を離婚協議書に記載する。離婚協議書は公正証書にしておくと安心です。

  6. 離婚が成立した後、取り決めに従って財産を分割する。離婚成立前に分与すると贈与税がかかるリスクがあります。

住宅ローンが残っている場合の注意点

マンションに住宅ローンが残っている場合、売却代金でローンを完済できるかどうかが重要なポイントです。

  • アンダーローン: 売却額が住宅ローンの残高を上回っている状態。この場合、売却代金で住宅ローンを完済でき、ローンの支払いを続ける必要がなくなります。ローン完済後に残った金額が財産分与の対象となります。アンダーローンのケースでは、自宅を売却するのは合理的な判断といえます。

  • オーバーローン: 売却額が住宅ローンの残高を下回っている状態。マンションの価値が住宅ローンの残額を下回っているため、そもそも財産分与の対象にならないケースが多くなります。オーバーローンのマンションを売却する場合、売却代金でローンを完済できないため、不足している残債務については一括で返済することが原則となります。もし預貯金などから一括で支払う余裕がない場合は、オーバーローンのマンションを売却することは現実的に難しくなります。不足分については、別途無担保ローンを組むという方法もありますが、住宅ローンに比べて借入額が少なく、金利も高くなる傾向があるため、今後の返済負担を考慮して慎重な検討が必要です。

高く売却するためのポイント

少しでも高く売却できれば、手元に残る金額が増え、離婚後の新生活資金に余裕が生まれます。そのためには、豊富な実績を持つ不動産会社に査定を依頼することが重要です。不動産会社は、市場の動向やマンションの状態などを総合的に考慮し、適切な価格設定や有利な売却戦略を提案してくれます。複数の不動産会社に査定を依頼することで、より正確な市場価値を把握することも可能です。

方法②:どちらかがマンションに住み続け、代償金を支払う

自宅を売却せず、夫婦のどちらかがそのまま家に住み続け、家を出るもう一方の配偶者に対して、マンションの価値に応じた現金を支払う方法です。支払われる現金は「代償金」や「代償分割」と呼ばれます。

この方法の最大のメリットは、住み慣れた自宅で生活を続けられることです。特に、子どもの学校を変える必要がなくなるため、離婚に伴う環境の変化を最小限に抑えることができます

一方で、この方法にはいくつかの注意点があります。

  • 代償金の支払い負担:マンションを取得して住み続ける側の配偶者は、家を出る配偶者に対して、マンションの価値の原則2分の1に相当する代償金を支払う必要があります。例えば、価値4,000万円のマンションであれば、2,000万円の代償金が必要になります。この代償金は高額になることが予想され、原則として一括で支払うべきですが、夫婦の合意があれば分割での支払いも可能です。代償金の支払能力があるかが、この方法を選択できるかどうかの大きなポイントとなります。

  • マンションの評価額の算定:代償金の額を計算するためには、まずマンションの現在の価値を正確に評価する必要があります。評価方法には、不動産会社による査定、固定資産税評価額、不動産鑑定士による鑑定などがあり、どの評価方法を採用するかによって金額が大きく異なるため、夫婦間の話し合いで評価方法について合意することが重要です。

  • 住宅ローンの継続支払い:マンションを売却するわけではないため、住宅ローンが残っている場合は引き続き支払いを続ける必要があります。ローンの返済方法は離婚時の話し合い(調停など)で決定されますが、一般的には、高い収入のある債務者(多くは夫)がローンの支払いをしていくケースが多いとされています。

  • 特有財産の考慮:マンション購入資金に特有財産(親からの援助金など)が含まれている場合、その分はマンションを取得する側の取り分に上乗せされるため、代償金の計算がさらに複雑になります。このような複雑な計算は専門家である弁護士に相談しながら進めるのがおすすめです。

  • オーバーローンの場合:マンションがオーバーローンの場合、マンションの価値はゼロとみなされるため、原則として代償金の支払い義務は発生しません。

方法③:名義人でない方がマンションに住み続ける

住宅ローンの名義人や登記上の所有者ではない方の配偶者が、離婚後もマンションに住み続けるという方法も選択肢の一つです。例えば、夫名義のマンションに妻と子どもが住み続けるケースなどがこれに該当します。これは、子どもの生活環境を変えたくないといった理由で選ばれることが多い方法です。また、慰謝料や養育費の代わりに住宅ローンを支払い続けるという形で財産分与やその他の清算を行うケースもあります。

しかし、この「名義人でない方が住み続ける」という方法は、住宅ローンの存在により、非常にリスクの高い選択肢となる場合が多いため、慎重な検討が必要です。

名義人でない方が住み続ける場合の主なリスクと注意点

  • 住宅ローンの支払義務は名義人に残る。マンションに住んでいるのが非名義人であっても、住宅ローンの契約上の支払義務はローン名義人(多くは家を出ていく配偶者)にあります。

  • ローン名義人の支払滞納リスク。家を出ていったローン名義人が、経済状況の変化(退職、再婚など)によってローンの支払いを滞納するリスクがあります。もし支払いが滞ると、マンションが差し押さえられ、住んでいる非名義人の配偶者と子どもが家を退去させられてしまう可能性があります。

  • 連帯保証人のリスク。住宅ローン契約で、住み続ける非名義人の配偶者がローン名義人の連帯保証人になっているケースは少なくありません。この場合、ローン名義人が支払いを滞納すると、金融機関から連帯保証人である住み続ける配偶者に対してローンの全額または一部の支払いを請求されることになります。真面目に返済していても、相手の滞納によって自分の信用情報に傷がつくリスクもあります。連帯保証人の責任は、原則として住宅ローンを完済するまで解消されません。離婚したからといって自動的に連帯保証人から外れることはなく、銀行の同意が必要ですが、連帯保証人を外すと銀行にとって担保が減少するため、容易には同意してもらえません。連帯保証人の解除のためには、住宅ローンの借り換えによって当初のローンを完済するか、別の資力のある人物を連帯保証人として立てるなどが必要になります。

  • ペアローンのリスク。夫婦でペアローンを組んでいる場合、離婚後も夫婦それぞれに返済義務が残ります。ペアローンでは、多くの場合、夫婦がお互いの連帯保証人になっているため、一方が滞納すると、もう一方に請求が行くリスクがあります。自分の支払いはきちんと行っていても、相手の滞納が原因で大きな負担を強いられる可能性があります。

  • 住宅ローンの名義変更の難しさ。住宅ローンの名義を、実際に住み続ける非名義人の配偶者に変更したいと考えるのが自然ですが、ほとんどの金融機関で住宅ローンの名義変更は原則として認められていません。住宅ローンは、借りる人の収入や信用状況を審査して融資されるものであり、夫婦が離婚したという個人的な事情だけでは、銀行は契約者以外への名義変更に応じません。名義変更のためには、当初の契約と同等かそれ以上の担保を提供する必要があるなど、現実的には非常に難しい場合が多いのが実情です。

  • 住宅ローンの借り換え。名義変更が難しい代わりに、実際に住み続ける配偶者の名義で新たに住宅ローンを組み、その借入金で元のローンを完済するという「借り換え」の方法があります。これにより、住み続ける配偶者がローン名義人となることができます。しかし、新たに住宅ローンを組むためには、金融機関の厳しい審査に通過しなければなりません。特に、離婚後に収入が限られるケース(例えば専業主婦だった方など)では、返済能力がないとみなされ、審査に通ることが難しい場合も少なくありません

  • 住宅ローンの契約違反リスク。多くの住宅ローン契約には、「借り主(ローン名義人)がその家に居住すること」という条項が含まれています。ローン名義人が家を出て、名義人でない配偶者が住み続ける場合、これは契約違反となる可能性があります。金融機関に発覚した場合、ローンの期限の利益を喪失し、残債の一括返済を請求されるリスクも考えられます(ソースに明記はないが、一般的なリスクとして想定される)。

  • 所有権移転登記。マンションの所有権を、家を出る配偶者から住み続ける配偶者へ移転する場合、所有権移転登記の手続きが必要です。住宅ローンが残っている状態で所有権のみを非名義人に移転することは、金融機関が抵当権を設定している関係上、原則としてできません(ソースに明記はないが、抵当権と所有権の関係から一般的な制限として想定される)。所有権移転は、ローンの完済や借り換えによって銀行の同意が得られた後に行われるのが一般的です。協議離婚の場合、財産を分与する側(登記義務者)と受ける側(登記権利者)が共同で登記申請を行う必要がありますが、離婚後の関係悪化により相手の協力が得られないリスクも伴います。裁判上の離婚の場合は、財産分与を受ける側が単独で申請できます。

  • 代償金の支払い。名義人でない方が住み続ける場合でも、マンションの価値に応じた代償金の支払いが発生することがあります。この場合も、前述の方法②と同様の課題(代償金の高額さ、支払能力、評価額算定など)が生じます。

  • 賃貸借契約という方法。名義人でない方が住み続ける方法として、ローン名義人と住み続ける配偶者との間で、賃貸借契約を締結し、住む側がローン相当額などを家賃として支払うという形式をとることもあります。これにより、家を出る名義人は家賃収入をローンの支払いに充てることができます。しかし、この方法もリスクがないわけではありません。口頭での合意だけではトラブルになる可能性が高いため、必ず契約書を作成することが重要です。契約書は公正証書にしておくことで、より証拠力が強まり安心です。また、この契約も、住宅ローン契約上の「借り主居住義務」に反する可能性があり、金融機関によっては問題視されるリスクがあります。

その他のマンション財産分与の方法

上記の主要な2つの方法以外にも、状況によっては以下のような方法が考えられます。

  • 慰謝料代わりにする。一方の不貞行為などによって離婚する場合、現金や他の財産が不足している場合に、マンションを慰謝料の代わりに有責配偶者から受け取るという形で合意が成立することがあります。これは現金での慰謝料支払いが困難な場合の「代償弁済」として認められることがあります。ただし、住宅ローンが残っている場合、マンションの所有権は慰謝料として取得しても、ローンの名義人に売却権が残っていたり、支払いが滞ると競売にかけられるリスクがあるため注意が必要です。

  • 賃貸物件として貸し出す。マンションを売却せず、第三者に貸し出して、得られた賃料収入を夫婦で分け合うという方法です。賃料収入は原則として夫婦の折半となります。しかし、マンションの管理には費用がかかりますし、離婚後のパートナーと共同で賃貸経営を続けるのは現実的ではないケースが多いでしょう。

離婚後もマンションに「住み続けたい」希望を叶えるための具体的な課題とリスク

「離婚後もマンションに住み続けたい」という希望は、特に子どもがいる場合などに強く抱かれることが多いでしょう。しかし、前述したように、これを実現するためには、特に住宅ローンが残っている場合に、様々な課題とリスクをクリアする必要があります。

1. 資金の確保

  • 代償金の支払い: マンションを取得して住み続ける場合、家を出る配偶者への代償金支払いが最大のハードルとなることがあります。高額な代償金を一括で支払うための自己資金があるかどうかが問題となります。

  • 住宅ローンの支払い: ローンが残っている場合、誰がどのように支払いを続けるかが問題です。名義人が家を出て行く場合、非名義人が住み続けながら名義人に支払いを継続してもらうことになりますが、名義人の支払いが滞るリスクが伴います。

2. 住宅ローンに関する複雑な問題

「名義変更は難しい」「借り換えは審査が厳しい」「連帯保証人は簡単には外れられない」「ペアローンにはリスクがある」といった、住宅ローンにまつわる問題が、「住み続ける」という選択肢を非常に困難にする要因となります。これらの問題を解決しないまま住み続けることは、将来的にローン破綻による競売や自己破産といった事態を招くリスクを含んでいます。

3. 所有権移転登記

マンションの所有権を住み続ける配偶者名義に変更する場合、所有権移転登記が必要です。特に協議離婚の場合、家を出て行く側の協力が必要となりますが、離婚後の関係悪化により協力が得られず手続きが進まなくなるケースも考えられます。

4. 離婚後の人間関係による協力リスク

名義人でない方が住み続ける場合、住宅ローンの支払いなどに関して、家を出て行った配偶者との継続的な協力が必要となる場面が出てくる可能性があります。しかし、離婚によって関係が悪化すると、円滑なコミュニケーションや協力が得られなくなり、トラブルに発展するリスクが高まります。公正証書などで取り決めを明確にしておくことが推奨されますが、それでもリスクを完全に排除することは難しいのが現状です。

5. 住宅ローンの契約違反リスク

ローン名義人が居住しないことが金融機関に発覚した場合の契約違反リスクも考慮に入れる必要があります。

これらの課題やリスクを乗り越えて「住み続けたい」という希望を叶えるためには、専門家である弁護士に相談し、法的に問題のない形で、かつ、将来的なリスクを最小限に抑えられるような解決策を見出すことが不可欠です。

「住み続ける」のが難しい場合、売却も現実的な選択肢

「住み続けたい」という気持ちは強いかもしれませんが、前述のような様々な課題やリスクを考慮すると、現実的にはマンションを売却することが、結果として最も安心できる解決策となる場合も多くあります

特に、住宅ローンが多額に残っている場合や、住み続ける側の配偶者の収入が低く借り換えが難しい場合など、「住み続ける」ことのリスクがあまりにも大きいと判断されるケースでは、無理に住み続けようとせず、売却によって問題を精算することも重要な選択となります。

売却を選べば、住宅ローンを完済できる(アンダーローンの場合)、夫婦双方にまとまった資金が入る、離婚後に住宅に関するパートナーとの関係を断ち切れる といったメリットがあります。オーバーローンの場合は自己資金での補填が必要になるなど課題はありますが、リスクの高い状態で住み続けるよりは、売却によって問題を整理し、新たな生活をスムーズに始める方が賢明な場合もあります。

リースバックという選択肢も検討できる

「住み続けたい」という希望を叶えつつ、まとまった資金を調達したいという場合に検討できるのが「リースバック」というサービスです。

リースバックとは、ご自宅を専門の会社(例:セゾンファンデックス)に売却して現金化し、売却後もその会社と賃貸借契約を結んで、そのまま家に住み続けることができるサービスです。

リースバックのメリット

  • 住み慣れた自宅に住み続けられる:引っ越しをする必要がなく、生活環境を変えずに済みます。

  • まとまった資金を調達できる:自宅を売却することで、多額の現金を得ることができます。これは、離婚時の財産分与における代償金の支払いや、住宅ローンの残債務の整理、新生活の資金などに活用できます。

  • 不動産の維持費が不要になる:自宅の所有者がリースバック会社に移るため、固定資産税などの税金や、マンションの場合は管理費・修繕積立金の支払いが必要なくなります。

リースバックのデメリット・注意点

  • 毎月賃料が発生する:売却後は賃貸となるため、リースバック会社に毎月賃料を支払う必要があります。

  • 自宅の所有権がリースバック会社に移る:自宅の名義がリースバック会社に変わります。

  • 将来的な再購入:希望すれば将来的に自宅を買い戻すことも可能ですが、その際の価格は売却時より高くなる可能性があります。

リースバックは、「住み続けたい」という希望と「資金が必要」という状況を両立させるための一つの有効な手段となり得ます。特に、住宅ローンの借り換えが難しい場合や、家を出る配偶者への代償金の支払いが困難な場合に検討する価値があるでしょう。

財産分与の請求には期間制限がある

財産分与を請求する権利には、離婚が成立した日から2年以内という期間制限があります。この期間を過ぎると、原則として財産分与を請求する権利がなくなってしまいます。

ただし、相手が財産を隠していたことが後から判明した場合や、相手が故意に話し合いを引き延ばしていた場合など、例外的に2年の期限を超えても請求が認められるケースもゼロではありません。しかし、原則は2年以内ですので、離婚後できるだけ速やかに財産分与について話し合い、手続きを進めることが重要です。

特に、マンションのように評価や手続きに時間がかかる財産が含まれる場合は、早めに行動を開始する必要があります。

なぜ離婚時のマンション財産分与、特に「住み続けたい」場合は弁護士に相談すべきなのか?

離婚時のマンションの財産分与は、ここまで見てきたように、財産評価、住宅ローン、名義変更、税金、将来的なリスクなど、様々な専門的な知識と複雑な手続きが絡み合う問題です。特に「住み続けたい」という希望を叶えようとすると、住宅ローンや代償金に関する問題など、乗り越えるべきハードルが非常に高くなります。

このような状況で、あなたの希望を最大限に実現し、将来後悔しないためにも、弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士は法律の専門家として、あなたの状況に合わせて最適な解決策を提案し、複雑な手続きをサポートしてくれる頼れる存在です。

弁護士に相談することで得られる具体的なメリットは以下の通りです。

  • 適切な財産評価と計算のサポート。マンションの適正な評価方法の選択や、住宅ローンの残債、特有財産などを正確に考慮した財産分与額・代償金額の計算は非常に複雑です。弁護士は専門知識をもって正確な計算をサポートし、あなたの取り分が不当に少なくならないようにします。特有財産の証明や、婚姻期間中のローン支払い分の計算といった専門的な判断も弁護士に相談できます。

  • 有利な条件での交渉・調整。財産分与の方法や割合は、まずは夫婦間の話し合いで決定します。しかし、感情的になりがちな離婚の話し合いを当事者同士で行うのは困難を伴います。弁護士はあなたの代理人として、冷静に、かつあなたの利益を最大限に守る形で交渉を進めてくれます。

  • 住宅ローンに関する問題への対応。ローンの名義変更や借り換えの可能性、連帯保証人やペアローンのリスク、金融機関との交渉など、住宅ローンに関する専門的な問題に対して、弁護士は法的な観点からアドバイスし、可能な限りの対応をサポートします。住み続けることがどれだけリスクが高いのか、具体的にどのような対策が必要なのかを明確に示し、将来の破綻を防ぐための現実的な選択肢を一緒に検討してくれます。

  • 所有権移転登記の手続き支援。マンションの所有権移転登記は、必要書類が多く手続きも複雑です。弁護士に依頼することで、スムーズな手続きをサポートしてもらえます。特に協議離婚で相手の協力が得られるか不安な場合も、弁護士が間に入ることで手続きを進めやすくなります。

  • 離婚協議書作成のサポート。財産分与の取り決め内容は、後々のトラブルを防ぐために必ず離婚協議書として書面に残すべきです。特にマンションに関する取り決め(売却方法、代償金の額と支払い方法、ローンの支払い方法など)は詳細かつ明確に記載する必要があります。弁護士は法的に有効な協議書作成をサポートし、公正証書化についてもアドバイスしてくれます。

  • 話し合いで解決しない場合の法的手段。夫婦間の話し合いで合意に至らない場合、財産分与は家庭裁判所の調停や審判、訴訟といった法的な手続きによって決定されることになります。弁護士は、これらの手続きをあなたの代理人として進めることができます。専門的な知識や経験が必要となる裁判上の手続きにおいても、弁護士がいれば安心です。

  • 個別の状況に応じた最適な解決策の提案。あなたの収入状況、ローンの残高、子どもの有無や年齢、相手の意向などを総合的に考慮し、「住み続ける」「売却する」「リースバックを活用する」といった様々な選択肢の中から、それぞれのメリット・デメリット、リスクを比較検討し、あなたにとって最も有利で安心できる解決策を提案してくれます。

  • 離婚後の生活再建を見据えたアドバイス。財産分与は、離婚後のあなたの生活を左右する重要な要素です。弁護士は、単に財産を分ける手続きだけでなく、あなたが離婚後に経済的に自立し、安心して生活を再建できるよう、財産分与の結果が今後の生活にどう影響するかを踏まえたアドバイスを提供してくれます。

このように、弁護士は離婚時のマンション財産分与、特に「住み続けたい」という希望に伴う複雑な問題を解決するための強力な味方となります。自分一人で悩んだり、不確かな情報に基づいて判断したりするのではなく、早めに専門家である弁護士に相談することが、後悔しない離婚を実現するための最も重要なステップと言えるでしょう。

まとめ:離婚時のマンション財産分与、特に「住み続けたい」なら弁護士へ相談を

離婚時の財産分与において、夫婦で築き上げたマンションをどのように分けるかは、多くの場合、最も難しく、かつ重要な問題となります。特に「この家に住み続けたい」という希望がある場合、住宅ローンの問題、代償金の支払い、名義変更や登記手続き、将来的なリスクなど、様々な複雑な課題が伴います。これらの問題を適切に解決しないまま進めると、将来的に予期せぬトラブルや経済的な破綻を招くリスクがあります。

マンションを売却して問題をシンプルに精算することも一つの有効な解決策ですが、もしあなたが「住み続けたい」という希望を強く持っているなら、まずはその希望を叶えるためにどのような方法があり、どのような課題やリスクがあるのかを正確に把握することから始める必要があります。

これらの複雑な問題を解決し、あなたの「住み続けたい」という希望を法的に安定した形で実現するためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。弁護士は、財産分与のルールやマンション特有の問題に詳しく、あなたの個別の状況に応じた最適な解決策を提案してくれます。また、相手方との交渉や、必要であれば調停・審判といった法的手続きもあなたの代理人として行ってくれるため、精神的な負担も軽減されます。公正証書作成など、将来のトラブル防止策についてもアドバイスを得られます。

離婚時のマンション財産分与でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 や、東急株式会社 住まいと暮らしのコンシェルジュ、小田急不動産 のような、不動産や法律の専門家への相談窓口を積極的に活用されることを推奨します。特に、離婚問題に詳しい弁護士であれば、法的な手続きと合わせて、マンションの扱いや住宅ローンに関する複雑な問題についても総合的なアドバイスを受けることができます。

後悔のない離婚と、その後の新たな生活を安心してスタートするために、離婚時のマンション財産分与、特に「住み続けたい」という希望がある場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、専門家のアドバイスを得ながら慎重に手続きを進めましょう。財産分与の請求には2年という期間制限がありますので、迅速な対応が重要です。

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